記憶の表象

イラストレーションブログ
記憶の中の何かを形にしていく作業

続・吹き抜ける風

 風のある日に聞こえてくるあの音、ビニールホースを振り回しているような枯れた音の正体を突き止める日が来た。  折しも台風が日本列島直撃コースに乗り、吹きつのる風に追跡コンディションは万全とばかり靴を履き替える。予想目標は近所に見える大きな広告塔。夜になると煌々とネオンが灯るその広告塔は、隙間だらけでいかにも風を切る音がうなりを上げていそうな外観だ。  歩いて数分の距離をわくわくしながら近づいてみると、何故かあの音はどこかに消えてしまった。風は変わらず強い。なのに、風を切る音は耳元を過ぎるだけ。おかしいぞとぐるりとまわって住処の近くに戻ってみると、再び聞こえてくる寂れた音。  ゆっくり歩きながらその音を突き止めてみると、実に住処のすぐ裏手にある電信柱の上からだった。目をこらすと電線に保護カバーとして蛇腹のビニールホースがかかっている。その中を通る風の音なのだろう。  幽霊の正体見たり枯れ尾花、ではないが、してやられた感にしばらく立ちつくすのだった。 20130927
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