花の視点

20130929 気温もそれほど上がらない晴れの午前を歩く。住宅街には鮮やかな秋の花があふれて視線をさらうが、あまり見つめていると他人の敷地を覗き込んでいるようで落ち着かない。  境界を示す敷地の塀や生け垣に、ただフェンスや常緑樹を植えたのでは味気ないと花を飾る。季節ごとに咲き誇る大きな花木を植えたり、小さな草花を植えたプランターをフェンスにかける。本来は通りの往来から視線を遮る役目を担うはずの生け垣に、華やかに視線を集めるためのワンポイントが生まれれば、覗き込む人がいても無理のない事だろう。  闇雲に花を植えるのではなく、人の視線も考えて花を配置する。住宅街のガーデニングはそんな考えも必要なのだと思うのだが。

続・吹き抜ける風

 風のある日に聞こえてくるあの音、ビニールホースを振り回しているような枯れた音の正体を突き止める日が来た。  折しも台風が日本列島直撃コースに乗り、吹きつのる風に追跡コンディションは万全とばかり靴を履き替える。予想目標は近所に見える大きな広告塔。夜になると煌々とネオンが灯るその広告塔は、隙間だらけでいかにも風を切る音がうなりを上げていそうな外観だ。  歩いて数分の距離をわくわくしながら近づいてみると、何故かあの音はどこかに消えてしまった。風は変わらず強い。なのに、風を切る音は耳元を過ぎるだけ。おかしいぞとぐるりとまわって住処の近くに戻ってみると、再び聞こえてくる寂れた音。  ゆっくり歩きながらその音を突き止めてみると、実に住処のすぐ裏手にある電信柱の上からだった。目をこらすと電線に保護カバーとして蛇腹のビニールホースがかかっている。その中を通る風の音なのだろう。  幽霊の正体見たり枯れ尾花、ではないが、してやられた感にしばらく立ちつくすのだった。 20130927

日焼け跡

20130921 今年の夏は外出する事が多かった。外出と言っても近場がほとんど、電車に乗ったりバスに乗ったり、人混みの中を闊歩する事は少なかった。  リゾート地で愛用しているのは小笠原諸島で「ギョサン」として通っているサンダル。ある程度重みがあり鼻緒があるタイプなので、水の中で波にさらわれることなく岩場を歩ける。父島ではじめて手に入れたのは随分前の事だが、「コレは便利だ」と話を広めている内にお土産として頂いたり、産地が本土だと判明したり、何下に知る人ぞ知る名品として出回っていたりでいまだに我が家の下駄箱から姿を無くす気配はない。  夏の間近場を出歩く際はもっぱらギョサンを使っていたために、ギョサンの形に日焼け跡がくっきりと残ってしまった。足元だけを見るとサーファーのような出で立ちだと笑い話になる。行楽には全く出歩かなかったが、その日焼けの形がいろんな思い出を蘇らせてくれる。

吹き抜ける風

20130914 子供の頃、プラスチックのホースを振り回して音を出す遊びがあったのを覚えているだろうか。そう言う玩具だったのか、洗濯機のホースを振り回していたのか、記憶が定かではないが回す速度によって音の高低が変わるのを面白がった事は良く覚えている。  その音に気がついたのはもう随分前だ。何処からかあの遠心力でホースの中を吹き抜ける風の音が聞こえてきていた。最初は子供の遊びかと思っていたが、聞こえてくる方向に子供の姿はない。そして聞こえてくるのは決まって風のある日。きっとどこかで風が吹き抜ける音なのだろう。  音が聞こえてくる方向に向かって駆け出したい衝動に駆られる。自分が小学生だったのなら迷わず駆け出しただろう。そんな時、決まって何かの作業中で手を離す事が出来ない。大人の事情というヤツだ。それでも、次に風が吹いてあの音が聞こえてきたなら、きっと心の抑えが効かないだろう。台風の予報円をながめながら期待している自分がいる。

あかり

20130912 我が家の照明は基本電球色。暖かみがある赤い色が夜の落ち着きを演出してくれるので、すべてを電球色にしている。ただ、仕事部屋だけは赤い色かぶりが正しい色を認識出来づらくなるので、白色の照明を入れる事にしている。  引越を機会に古いスタンドを処分して、IKEAでちょっと洒落たスタンドを買ってきた。時代はLED、スタンドももちろん発光ダイオードだ。ところが何を勘違いしたのか電球色のLEDを買ってきてしまった。これではスタンドを置く意味が全くない。  意外と高いLED電球、白熱球と同じサイズの物よりもちょっと小さめのE-17口という物の方が値段が高い。そんな事で躊躇して、いったいいつちゃんとした環境になる事やら。いっそ日が傾いたら何もしない事にしようか。

夏の終わりに

20130911 季節はいつの間にかすっかり秋。肌を焦がすような陽差しが照りつけようとも、風は優しく夜は涼しい。日没の時間もすっかり早くなった。  またまた引越をした。今度はしばらく腰を据える事になりそうだ。前二つの場所で段ボールの箱にしまわれたままだった宝物を一つ一つ開封していく。お気に入りの陶器のヤモリやアンモナイトの化石を何処に飾ろうか。  秋の乾いた風が吹き抜けると、地中海の気持ち良い季節を思い出す。そう言えばあのあたりも山に登ればアンモナイトがたくさんとれると聞く。一度はそんな渓谷に登ってみたいと思うのだ。