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夏の終わりに

20130911 季節はいつの間にかすっかり秋。肌を焦がすような陽差しが照りつけようとも、風は優しく夜は涼しい。日没の時間もすっかり早くなった。  またまた引越をした。今度はしばらく腰を据える事になりそうだ。前二つの場所で段ボールの箱にしまわれたままだった宝物を一つ一つ開封していく。お気に入りの陶器のヤモリやアンモナイトの化石を何処に飾ろうか。  秋の乾いた風が吹き抜けると、地中海の気持ち良い季節を思い出す。そう言えばあのあたりも山に登ればアンモナイトがたくさんとれると聞く。一度はそんな渓谷に登ってみたいと思うのだ。

夏の構成

20130814 お盆の陽差しは殺人的で、コンクリートで出来たマンションは日が陰っても太陽からうける膨大なエネルギーを蓄え続ける。大きなタジン鍋で蒸される前に、わずかでもベランダと廊下に打ち水をして、その向こうの清々しい空気を取り入れなければならない。  焼け石に水をかけるがごとくの作業だが、その蒸発していく水は独特の香りをもって古い記憶を呼び覚ます。真夏のプール、水泳の授業、塩素の臭いと冷たい青い水。ばしゃばしゃと跳ね上げる水が焼けたコンクリートにかかって蒸発する、あの時の臭い。  ずっとプールの臭いは塩素の臭いだと思っていた。屋内プールでの記憶は確かに塩素の臭いばかりなのだが、あの学校の屋外プールでの臭いは確かに水が蒸発する時の臭いだった。若しくはコンクリートから発する何かだろうか。ちょっと座り込んで膝小僧の臭いをかぎながら、僅かばかりのタイムスリップ。

夏が来る。

20130607 梅雨入り宣言が出たとたんに毎日真夏のような晴れ空。気象庁が宣言を撤回しようか検討していると噂に聞こえてくる気持ちの良い青空の下をバイクで走る。田園地帯は先週まで苗を寄せ植えしてあった田に、溜池から水が引かれている。早い所ではもう耕耘機を持ち出して田植えが始まっていて、乾いた土に水が染み込む時に発するのであろう湿った臭いがふわりと風に乗って届く。  幼少期を過ごした街に水田があったのは物心つくかつかないかの頃まで。だから田植えを手伝ったり泥んこになったりと言う思い出はほとんど無い。その代わりに湿った土の臭いと晴れた空で思い起こす事が一つある。丁度今頃、梅雨の晴れ間になるとやってくるプール掃除。冬の間隣の小さい池から魚を放流して大きな池のように濁っているプールから水を抜き、魚を元の池にもどして泥を落とし、夏の水泳の授業に備えてプール開きの準備をするのは、毎年我が水泳部の仕事だった。  晴れた空の下、学校の中で公然と水遊びが出来るイベントが大好きだった。夏が来る準備をする様で泥臭さなど忘れてしまうほど心が浮き立ったものだ。今考えると冬の間とはいえ魚をプールに放流する学校はなかなか面白い校風だった。それで誰が得をするわけでもないのだが、水泳部の面々だけは土曜日の昼下がりなどに釣りを楽しんだ。釣れたという記憶は全くないが。  水田に水が満ち、小さな生き物たちが何処からか湧き出でて、待ち望んだ夏が来る。